廃用症候群にならないためには?原因や症状を踏まえて考えるべきこと
- 2024.04.23
最終更新日 2024.5.16.
【シニアカーのエキスパート!シンエンス監修】病気やケガなどで安静にする期間が長くなると、それだけ体を動かす機会が減りますよね。
特に高齢者の方はそういったことがきっかけで廃用症候群に陥りやすくなります。廃用症候群になると筋力などの身体を動かすことへの影響はもちろん、体の内部や精神にも影響をきたすことが多く注意が必要です。
この記事では廃用症候群になる原因や具体的な症状、予防策や治療法などについて紹介していきます。
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目次
廃用症候群とは
廃用症候群(はいようしょうこうぐん)とは、加齢や病気により長期間安静にすることで身体に起こるさまざまな症状のことをいいます。
人間の体は、1週間安静にしていると筋力が約10〜15%低下するといわれています。高齢者の場合は特に顕著に現れます。
筋力低下などの運動器の症状だけでなく、体内の疾患や精神面にも影響をあたえます。
「最近今までのように歩けない」「起き上がれない」「笑顔がなく表情が暗いな」などの状態があれば、もしかしたら廃用症候群かもしれません。
廃用症候群は一度なってしまうと回復するのにとても時間がかかります。そのため予防していくことが大切になります。
ロコモティブシンドロームやサルコペニアとの違い
似たような言葉としてロコモティブシンドロームやサルコペニアがあります。
廃用症候群、ロコモティブシンドローム(ロコモ)、およびサルコペニアはすべて、特に高齢者に見られる健康問題ですが、それぞれが異なる状態を指します。以下に、それぞれの状態の特徴と違いを説明します。
ロコモティブシンドローム(ロコモ)
ロコモティブシンドローム(略称ロコモ)とは、加齢や病気により運動器に障害がおこり、筋力や関節の低下が原因で、日常の移動機能が低下した状態を指します。
運動器の障害とは、加齢による筋力の低下・椎間板狭窄症・変形性関節症・骨折・骨粗しょう症などがあり、今までのように立ち上がったり、歩いたりが難しくなることです。
歩行障害が起こるため、いずれ要介護状態になる可能性が高くなります。
サルコペニア
サルコペニアとは、特に高齢者に見られる、加齢や病気により筋肉量の減少や筋力が低下することを指します。加齢による生理的な変化が主な原因ですが、活動不足や栄養不良も影響します。
そのため、ロコモの一部だと思っていいでしょう。
廃用症候群は、長期安静状態により起こる身体のさまざまな状態をさすため、運動機能低下や歩行障害に限らず広い範囲での身体機能の低下となります。
つまり、ロコモ・サルコペニアは加齢や老化によって筋肉など運動器が低下した状態、廃用症候群は活動不足による、全身の機能が低下した状態を説明する言葉となります。
サルコペニアについて詳しく知りたい人は、「サルコペニアとは?原因や判断基準、高齢者の筋力低下を予防する方法」をあわせてご覧ください。
廃用症候群の主な症状
廃用症候群には以下のような症状があります。
以下で詳しく解説していきます。
運動器(筋肉・関節・骨)系の症状
■ 筋萎縮・筋力低下
■ 関節拘縮
■ 骨萎縮
加齢や疾患による安静制限などで、体を動かさないと筋萎縮や筋力の低下が起こります。
筋力が低下すると動くことが億劫になり、活動量が低下します。
その結果、筋力が更に低下して、悪循環に陥りADLの低下につながるでしょう。
また関節は動かさないと硬くなります。
硬くなると今までのように曲がらなくなるため、歩行が難しくなり、筋力の低下や骨萎縮も重なり転倒や骨折のリスクがあがります。
循環・呼吸器系の症状
■ 誤嚥性肺炎
■ 心機能低下
■ 血栓塞栓症・肺塞栓症
嚥下機能が低下するため、食事や自分の唾液が気管や肺に垂れ込み、誤嚥性肺炎になります。
心機能が低下すると全身に十分な血液が送られません。そのため、息切れや疲労感などが起こります。
また、血流が悪くなると血液がかまって血栓ができたり、血液のかたまりが肺にとんで肺塞栓になることがあります。
自律神経・精神系の症状
■ 起立性低血圧
■ せん妄
■ 見当識障害
■ うつ状態
安静期間が長いと急に起き上がることで脳に十分な血液が流れず、めまい・ふらつき・血圧低下などの起立性低血圧を起こすことがあります。
急に起き上がるのではなく、少しずつ体を慣らしてあげましょう。
入院中であれば、環境の変化からせん妄といって幻覚や幻視、昼夜逆転などの症状がみられます。
また、外部からの刺激が減ることで、「どこにいるのか」「今日が何月なのか」などの見当識障害がみられます。
このような症状は、できるだけ早く通常の生活に戻すことが大切です。
病気が落ち着いて来たら自宅退院して元の生活を送るようにしましょう。
泌尿器系の症状
■ 尿路結石・尿路感染症
安静や筋力低下によりしっかりと排尿できず膀胱内に尿が停滞することで起こります。
発熱・血尿・排尿時痛・残尿感などがあります。
水分摂取量も減るので意識して水を飲むようにしましょう。
皮膚系の症状
■ 褥瘡(じょくそう)
褥瘡(じょくそう)は、いわゆる床ずれのことをいいます。
安静のため、同じところを長時間圧迫することで血流障害が起こります。発赤や水泡から始まり、ひどくなると潰瘍へと変化し、骨や神経まで広がります。
絶対安静であっても、定期的に体位変換して同一部位の圧迫を防ぎましょう。
消化器・代謝系の症状
■ 逆流性食道炎
■ 食欲不振
■ 便秘
■ 耐糖能異常
逆流性食道炎は、胃酸や胃の中の食べ物が食道まで逆流することでおこります。胸やけや胃もたれ、口の中が酸っぱい感じがするなどの症状です。
また活動量の低下により食欲がなくなり、食事や水分をしっかり摂取できないと便秘につながります。
耐糖能異常とは、血糖値が正常よりも高い状態のことをいい糖尿病予備軍ともいわれます。
日ごろから症状がないか注意して、食事に気をつけたり運動するようにしましょう。
廃用症候群になる原因は?予防方法はあるの?
原因として、加齢や病気による入院生活、安静制限で筋力が衰えることで廃用症候群になる可能性が高くなります。
自宅で生活していても家族が介助をし過ぎてしまった結果、活動量が減り筋力低下につながることもあります。
少し介助すると自分でできることも介助力の不足から行えず、廃用症候群になることもあるでしょう。
予防として、できることは自分でやることが大切になります。
例えば、オムツ内で排泄するのではなくポータブルトイレやトイレまで移動する、ベッドを起こして食事を摂取するのではなく、端座位になって足を地面につけて食事するなどです。
筋力が低下してきたり他者の介助になれてしまうと、自分で行うことが億劫になるかもしれません。それでは更に筋力の低下につながります。
安静にしすぎないで、動いていい範囲内で体を動かして少しでも筋肉を動かすようにしましょう。
廃用症候群になってしまった場合の対処法や治療法
廃用症候群になってしまった場合、3つの方法があります。
①:無理のない範囲で極力体を動かす機会をつくる
②:リハビリテーションを受ける
③:医師と相談の上で薬物治療をする
以下で詳しく解説していきます。
①:無理のない範囲で極力体を動かす機会をつくる
体を動かすことが一番大切です。散歩や外出ができるといいですが無理をしては継続できません。そのため日常生活の中で体を動かす環境をつくりましょう。
例えば、日中に横になって過ごすのではなく座ってテレビをみたり、食器を運んだり洗濯を畳むなどの家事を無理のない範囲でおこなうことです。
負担がなければ少しずつ活動量を増やしていきましょう。
また介護保険制度を利用して、移動がサポートできる福祉用具をレンタルしたり、デイケアやデイサービスを利用したりして、外出する機会を作ることも大切です。
家族以外の人とコミュニケーションがとれるので気分転換にもなります。
②:リハビリテーションを受ける
入院中はケガや病気の状態に応じて、医師の指示のもとで行うリハビリがあります。
担当の理学療法士や作業療法士と一緒に継続して行うことが大切です。
また、退院後もリハビリ通院できる病院もあるので、今までのように動けないなどリハビリの必要性を感じたら相談してみましょう。
日によって体調のムラがあると思います。
リハビリが嫌にならないように、身体の状態に応じて内容を変更したりしてモチベーションを保ちながらリハビリしましょう。
あわせて読みたい記事:「リハビリテーションの意味を解説!高齢者の生活におけるリハビリとは」
③:医師と相談の上で薬物治療をする
廃用症候群で出現する状態によっては薬物治療が必要なこともあります。
誤嚥性肺炎や血栓塞栓症、うつ状態など医師と相談して指示にしたがって治療するようにしましょう。
リハビリをする際は歩行や移動に効果のある補助器具を使おう
リハビリは、身体の状況に応じて歩行や移動に効果のある補助具を使用することになります。
補助具にはウォーキングポール、歩行器、電動車いすやシニアカーなどがあります。
適切な補助具を使用することは、正しい姿勢を維持やバランス保持ができ、歩行や立位が安定するため転倒のリスクも少なくなります。
また、移動距離が拡大することで他者に依存することが減り、自立につながります。社会参加もできるようになるため、満足度や充実度があがるでしょう。
ここからは、それぞれの特徴を解説していきます。リハビリの際は、歩行や移動に効果のある補助具をぜひ利用するようにしてくださいね。
ウォーキングポール
ウォーキングポールとは、ポールウォーキングに使用します。
2本の専用ポールを両手にもって歩行することで正しい姿勢を保ちながら、安定して歩行を楽しめます。
筋力の向上にも効果があり、転倒予防にもつながります。
あわせて読みたい記事:「ウォーキングポールが高齢者の歩行補助におすすめの理由!選び方や使い方もあわせて紹介」
歩行器
歩行器とは、一人で歩けない人の歩行を補助するためのものです。
固定式やキャスター付き、折りたたみなどさまざまなタイプがあります。
リハビリの進行状況や歩行状態、使用する環境に応じて適切なものを選ぶ必要があります。
あわせて読みたい記事:「歩行器とは?種類や選び方、気をつけるべき注意点をあわせて紹介」
電動車いす(シニアカー)
また、長距離の移動には電動車いす(シニアカー)があります。移動の負担が減り、外出が気軽におこなえるようになるでしょう。
家からのシニアカーまでの移動や乗り降りを自分でおこなえば必然的に動く機会をつくることもできます。
シニアカーを取り扱う電動車いすの専門店「げんき工房」では、多くの販売実績があり、アフターサポートもしっかりしています。
全国に12店舗あるのでお近くの店舗に行って試乗してみてくださいね。
あわせて読みたい記事:「【シニアカー完全ガイド】免許や補助金、安全な使い方を解説!」
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シニアカーの使用について、不安がある方や疑問がある方も、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ:廃用症候群にならないためにも意識して体を動かす生活をおくろう
いかがでしたか?廃用症候群は一度なってしまうと以前の状態に戻すのは大変です。
そうならないためには予防が大切です。
他者に依存しすぎず、日常生活の中で「自分でできることは自分でする」ようにしましょう。運動をとりいれるより気軽にできます。
動くのが億劫になってしまうこともありますが、介護保険制度のサービスなども上手に活用して社会参加や友人とコミュニケーションをとることも効果的です。気分転換にもなります。
意識して体を動かしてみなさんで廃用症候群の予防をしましょう!