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バリアフリーをわかりやすく解説!誰もが快適に暮らすための取り組み

2024.01.22

【シニアカーのエキスパート!シンエンス監修】バリアフリーは、誰もが自由に活動し暮らしやすい環境で生活ができる社会を実現するための取り組みです。

建物のつくりや移動の際などの物理的なバリア(障壁)のみに焦点をあてず、人々の意識や制度面でのバリアなどについても考えていきましょう。

今回はバリアフリーに似ているユニバーサルデザインとの違いから、その概念や現在実施されているバリアフリー例、社会のバリアフリー化に向けた今後の課題などを紹介していきます。

バリアフリーとは?

バリアフリーとは、もともとは建築用語で、障壁(バリア)となるものを除去する(フリー)、つまり障壁となるものを取り除き生活をしやすくすることを意味しています。

建築物の段差をなくしたり、車いすでも通れるスペースを作ったりなど、高齢者や障がい者の人たちにとって生活のしやすい建物を作るための言葉として、バリアフリーという言葉が使われてきました。

しかし最近では、物理的なバリアだけでなく、社会的・心理的な障壁も取り除き、全ての人々が安心して暮らせる社会を実現させるという意味でバリアフリーという言葉が使われています。

ユニバーサルデザインとバリアフリーの違い

バリアフリーとよく似た言葉で、「ユニバーサルデザイン」という言葉があります。

バリアフリーは、障がいによってもたらされる障壁(バリア)に対処するための考え方です。

それに対し、ユニバーサルデザインは、障がいの有無や年齢・性別・人種などにかかわらず、多様な人々が利用しやすいように生活環境をデザインする考え方という意味で使われます。

詳しくは、「ユニバーサルデザインとは?身近なデザイン例や7原則を紹介」記事をあわせて読んでみてください。

バリアフリーに関する法律

バリアフリーに関する法律が制定されていくことで、社会の中で急速にバリアフリー化が加速しました。

正式名称「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」、通称バリアフリー法は、2006年に施行された重要な法律です。

この法律は、高齢者や障害者が社会生活を円滑に送ることを目的としており、建築物や交通機関などのバリアフリー化を推進しています。

法律の進化と背景

バリアフリー法は、1973年の「福祉モデル都市宣言」から始まり、1994年のハートビル法、2000年の交通バリアフリー法を経て、2006年に現在の形に統合されました。

2018年の改正では「ユニバーサル社会実現推進法」が公布・施行、心のバリアフリーも国民の責務とされ、バリアフリー化のさらなる強化が図られています。

ハートビル法

1994年に日本で最初に「ハートビル法」が施行されました。

正式名称は「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」です。

これは不特定多数の人が利用する建物などをバリアフリー化する法律で、施設や建物などに限定されて制定されています。

2006年12月のバリアフリー新法の施行に伴い廃止されました。

■交通バリアフリー法

正式名称「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」は、交通バリアフリー法と呼ばれ、2000年に施行された法律です。

高齢者や障害者が公共交通機関を円滑に利用することを目的としています。

この法律は2006年のバリアフリー新法施行により廃止され、その内容は新法に統合されました。

バリアフリー新法

バリアフリー新法は、2006年に施行された法律で、以前の交通バリアフリー法とハートビル法を統合したものです。2つの法を更新する形で幅広い分野でバリアフリーを新たに定義した法律です。

この法律は、高齢者や障害者が交通機関や建築物を含む公共空間を円滑に利用できるようにすることを目的としています。

バリアフリー化のための基本方針策定、施設管理者の措置、市町村による重点整備地区の計画などが定められています。

後述する、障がい者にとっての4つのバリアを無くすことが要件として追加され、あらゆる面で障がい者が生活しやすい社会を目指して作られた法律の内容となっています。

具体的な施策と効果

バリアフリー法に基づき、公共施設や交通機関ではエレベーターやホームドア、点字ブロック、多目的トイレなどが設置され、物理的な障壁が減少しました。

しかし、制度的や意識的な障壁の解消に向けた更なる取り組みが求められています。

バリアフリーの「バリア」には4つのカテゴリーがある

障がい者にとって、生活に影響を及ぼすバリアは、大きく以下の4つのカテゴリーに分けられます。

①:物理面のバリア
②:制度面のバリア
③:文化・情報面のバリア
④:意識上のバリア

参考:政府広報オンライン

それぞれどのような特徴があるのか確認していきましょう。

①:物理面のバリア|建物内や移動時の不便

①:物理面のバリア|建物内や移動時の不便

物理面のバリアとは、身体に不自由を抱えた人にとって障害となる物理的なバリアのことを指します。

たとえば、段差にスロープやエレベータなどがない施設や、幅が狭く車いすなどでは通り抜けられない場所などです。

これらは物理的に移動や日常生活に支障をきたす障害となるため、物理面のバリアといいます。

普段車いすに乗っていない人は何気なく通っている場所でも、世の中には「こんな場面でもバリアがある」ということに気づくだけで今後の見方がかわっていきます。

多角的な視点をもつ人が増えてくると、どんどん物理面のバリアは解決し、どんな人でも暮らしやすい社会になっていくでしょう。

②:制度面のバリア|ルールや制度による制限

②:制度面のバリア|ルールや制度による制限

制度面のバリアとは、身体的や精神的な障がいを抱えていることを理由に、受検や就職の拒否、サービスの利用拒否などの制限を受けることを指します。

たとえば、盲導犬を連れていることを理由にレストランへの入店を拒否されたり、身体的・精神的な障がいを抱えていることを理由に入学受検や面接採用を受けられないなどです。

これらは障がいを理由に生活や行動において制限を受けることになるため、制度面のバリアといいます。

大事なことは、障がいの有無に関わらず人は平等に暮らす権利があるということです。

「高齢者や障がい者などを隔離せず、健常者と一緒に助け合いながら暮らしていくことが正常な社会のあり方である」とするノーマライゼーションの考え方をもとに、社会が受け容れるようになっていくことで制度面のバリアは解消されていくでしょう。

③:文化や情報面のバリア|文化活動や情報の共有方法の不足

文化や情報面のバリアとは、障がいのある人が社会活動を行う上で正しい情報が受け取れないということを指します。

たとえば視覚に障がいがある人向けの音響機能を搭載していない信号機や、点字案内が用意されていない操作パネル。

音声案内以外でのアナウンスが受け取れない場所や、字幕機能に対応しておらず聴覚に障がいがある人が内容を読み取りづらいテレビ番組などです。

これらは障がいによって社会活動や生活における文化や情報の取得に制限を受けることになるため、文化や情報面のバリアといいます。

文化や情報面でのバリアを解消するには、信号機の色やエレベータのボタンなど、視覚に障がいを持っている人でも情報を受け取れるためのシステムが必要です。

同様に、テレビの映像が今何を伝えているかという情報を、聴覚に障がいを持っている人でも受け取れるようにする必要があるでしょう。

④:意識面のバリア|偏見や差別、無関心などからくる理解不足

意識面のバリアとは、身体や精神に障がいを持つ人などに対する偏見や差別、勘違いからくる理解不足などのことを指し「心のバリア」とも呼ばれています。

たとえば点字ブロックのあるところに自転車を置いてしまったり、身障者用の多目的トイレを一般の人が利用してしまったり。

車いす使用者以外が、車いす使用者のための駐車スペースに駐車をしてしまうことも挙げられます。

これらは障がいを持つ人に対する偏見や差別、また無関心からくる理解不足が原因となるため、意識面バリアといいます。

意識面のバリアは、1人でも多くの人々に関心を持ってもらうことで、次々にバリアフリーへの動きが広まっていくものです。

日常生活の中で相手の立場を考えるようになることで心のバリアフリーが進み、人に優しい暮らしやすい社会になっていくにちがいありません。

現代のバリアフリー例を紹介

具体的にバリアフリーにはどのようなものがあるのでしょうか。

街中や公共施設、住宅など身近なバリアフリーの例を挙げてみます。

スロープや階段

日常生活で見かけるスロープや階段、エレベーターやエスカレーターなど

スロープは、段差を上り下りするために設置される坂道のことです。車いすの人や杖を利用している人なども、スロープがあれば移動はしやすくなります。

階段のバリアフリー化は、一段の高さが18㎝以下、足を乗せる面を26㎝以上とし、幅は120㎝以上で手すりを設置するなど、上り下りがしやすいように様々な基準が設けられています。

エレベーターやエスカレーター

日常生活で見かけるスロープや階段、エレベーターやエスカレーターなど

エレベーターは奥行きや乗降ロビーの広さも車いす利用者に配慮した仕様としたり、ボタンは手が届きやすい低い位置で、点字表示がされていたりと身体障害者や視覚障がい者も使いやすいよう工夫されています。

エスカレーターでは、「このエスカレーターは上り(下り)です」のようなアナウンス音声を流しているものや、床用の案内標識を設置して視覚で示しているものもあります。 

公共施設の駐車場

公共施設での駐車場や多目的トイレ

「特別特定建築物」に該当する公共施設(病院や百貨店、映画館など)は、高齢者の人や車いすの人などのために、専用駐車場や多目的トイレを設置するようバリアフリー化が義務付けされています。

車いすの人のための駐車場は、幅が350㎝以上とし、利用する施設の入口付近に設置されています。

多目的トイレ

公共施設での駐車場や多目的トイレ

多目的トイレは、車いすの人をはじめ、高齢者や障がいのある人、子ども連れの人など、多様な人が利用できるよう設計されたトイレのことです。

車いすの人が利用しやすいように広いスペースを確保することや手すりの設置、オストメイト(人工肛門・人工膀胱をつけた人)対応の水栓器具を設置するなど、さまざまな基準が設けられています。

公共交通機関のホームドア

公共交通機関でのホームドアや案内表示、優先席や車いすスペース

公共交通機関にもさまざまなバリアフリーが存在します。

ホームドアとは、線路への転落を防止するためにホームの端に設置するドアのことで、2022年度末時点で1060駅で設置済みです。(※国土交通省HPより

公共交通機関の案内表示

電車の発車時刻や行先、遅延の状況などを表示する装置には色の区別がつきにくいという障がいがある人でも見分けやすいようカラーユニバーサルデザインが用いられていたり、視覚に障がいがある人に様々な音声や音響案内装置が設置されてたりします。

公共交通機関の優先席や車いすスペース

電車やバスの入り口付近には、高齢者や障がいのある人などが優先的に利用できる優先座席が設けられているほか、車いすのままで電車やバスが利用できるよう車いすスペースも設けられています。

知っていますか?バリアフリーに関するサイン

サインやシンボルマーク詳細
【障害者のための国際シンボルマーク】
車いす使用者に限らず、障害のあるすべての人が利用できる建物や施設を示す世界共通マークです。
【視覚障害者のための国際シンボルマーク】
視覚に障害のある人のための世界共通マークです。視覚に障害のある人が利用する機器などに表示されています。
【ベビーカーマーク】
ベビーカーを利用しやすい環境づくりに向けて作成されたマークです。安全な使用方法を守ったうえでベビーカーを折りたたまずに利用できるなど、ベビーカーを安心して利用できる場所・設備を表していいます。
【ほじょ犬マーク】
身体障害者補助犬同伴の啓発のためのマークです。公共施設や交通機関、スーパーやレストランなどの民間施設では、身体障害者補助犬を同伴するのを受け入れる義務があります。
【オストメイト用設備/オストメイトを示すマーク】
オストメイト(人工こうもん、人工ぼうこうをつけた人)を示すマークです。オストメイト対応トイレなどに使用されています
【耳マーク、手話マークなど】
聴覚に障害のある人のための国内で使用されているマークです。受付カウンターなどに掲示してあります。ほかにもコミュニケーションマークとして「手話マーク」などがあります。
【ハート・プラスマーク】
身体の内部に疾患のある人のためのマークです。外見からわかりにくいため、誤解をうけることがあります。そのような人の存在を視覚的に示し、理解と協力を広げるために作られたマークです
【ヘルプマーク】
外見からわからなくても、周囲の人に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるように東京都福祉保健局が作成したマークです。
自動車の運転者が表示する標識
障害のある人や、70歳以上の高齢者が車を運転するときに車に表示するマークです。
出典:政府広報オンライン|国土交通省「こころと社会のバリアフリーハンドブック」をもとにシンエンス作成

私たちは、バリアフリーに関するサインをどれくらい知っているでしょうか。

配慮が必要な人を支援するために、バリアフリーに関するさまざまなサインやシンボルマークがいろいろな場所で使われています。

本当のバリアフリー社会を実現するためにできること

バリアフリーとは、多様な人が社会に参加する上での障壁(バリア)をなくすことです。

心身に障がいがある人たちのことが考慮されていない社会は、障がいがある人たちにとってさまざまなバリアが存在しています。

自分の周りにはどのようなバリアを感じている人がいるか、バリアを感じている人の身になって考え、行動をおこすことが「心のバリアフリー」。

個人のレベルでの小さな行動や変化が、社会全体の変革に繋がることを理解することが大切です。

どんな立場でも安心して自由に生活をするために、公共機関などの物理的な物理的な障壁の除去だけでなく、私たちひとりひとりが多様な人のことを思いやる心のバリアフリーと行動の変化が必要です。

障害のある人々にとっても、ない人々にとっても、より良い社会を構築するために、すべての人が参加し、協力することが、本当の意味でのバリアフリー社会の実現に繋がるのではないでしょうか。

まとめ:バリアフリーを必要とする人以外もしっかりと意識することが大切

バリアフリー社会への移行は、私たち全員に関わることです。私たちのまわりにはさまざまなバリアフリーの工夫があります。

高齢者や障害を持つ人々にとってのみならず、社会全体にとっても、より良い環境を作るために、一緒に取り組みましょう。

バリアフリーを必要とする人以外もしっかりと意識し、バリアフリーの工夫に気がついたら、障がいのある人がそれを利用しやすいように配慮しましょう。

バリアフリーの施策は、障害を持つ人だけではなく、それを使うすべての人が考慮すべきものです。

例えば、最近は電動車いすやシニアカーを利用する高齢者が増えていますが、これもバリアフリー環境の進展の一つです。

シンエンスでは、電動車いす用モニタリングシステムの「モニスタ(GPS)」を提供しています。モニスタは、車両に搭載されたデバイスが走行中の電動車いすを常時モニタリングし、日々の使用状況や現在地をリアルタイムでお知らせしてくれるサービスです。

このような技術を導入することで利用者だけでなく、その家族も安心してバリアフリー社会で生活することが可能になります。

バリアフリーは、社会全体で支え合う文化の一環です。誰もが快適に過ごせる環境を作るためには、全員の意識と協力が不可欠といえます。

高齢者や障害を持つ人々にとってのみならず、社会全体にとっても、より良い環境を作るために、一緒に取り組みましょう。

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