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ICF(国際生活機能分類)を分かりやすく解説!コードの書き方や具体例も紹介

2024.04.04

【シニアカーのエキスパート!シンエンス監修】ICF(国際生活機能分類)は、個人の健康状態や心身機能、環境の影響を評価するための世界共通の基準です。

医療や介護の現場で使われることも多く、高齢者の生活の質の改善にも役立ちます。

この記事では、ICFの意味や各要素の具体例、福祉の現場では実際にどう活かされているのかをまとめました。ICF以前に採用されていたICIDHとの違いも解説します。

ICF(国際生活機能分類)とは

ICF(国際生活機能分類)とは、全ての人々の健康状態と関連する生活機能障害について、体系的に分類するための枠組みです。

2001年にWHO総会で採択されました。 この分類方法は世界共通のコードを使って、個人の健康とその社会的な側面を全面的に理解することを目指しています。

ICFコードは全部で1,443項目あり、人間の生活機能と障害に関して、アルファベットと数字を組み合わせたコードで表します。

ICFは、厚生労働省では以下のような目的に用いられているとされています。

・健康に関する状況、健康に影響する因子を深く理解するため
・健康に関する共通言語の確立で様々な関係者間のコミュニケーションを改善
・国、専門分野、サービス分野、立場、時期などの違いを超えたデータの比較
引用:第1回社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会参考資料3

つまり、ICFコードを使って分類をすることで言語の違いなどに左右されず、世界共通で個人にあった健康状態と健康関連状況を記録できるようになりました。

ICIDH(国際障害分類)とICF(国際生活機能分類)の違い

ICIDH(国際障害分類)とICF(国際生活機能分類)の違い
参考:第1回社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会参考資料3をもとにシンエンス作成

ICFの前身として、ICIDH(国際障害分類)というものがありました。

上の図にあるように、ICIDHは疾患や変調が機能障害に繋がり、能力障害や社会的不利に繋がるというような原因が心身の障害のみにあるような一方的な矢印で表現されるものです。

それに対して、ICFはさまざまな要素が相互的に関係していて障害だけでなく、「その人個人が属するコミュニティや生活する場所などの環境にも原因があるのでは」と目を向けている点が異なります。

また障害がある方だけに該当するような分類ではなく、すべての人に関する分類に変更されたことも大きな変更点です。

ICF(国際生活機能分類)の6つの構成要素を解説

参考:第1回社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会参考資料3をもとにシンエンス作成

ICFは以下の6つの主要な要素で構成されています。

①:健康状態
②:心身機能・身体構造
③:活動
④:参加
⑤:環境因子
⑥:個人因子

それぞれについて解説していきます。

①:ICFにおける「健康状態」

「健康状態」の要素は疾患や外傷に限らず妊娠や加齢など、人々の「生活機能」にいろいろな問題を起こしうる状態を指します。

②:ICFにおける「心身機能・身体構造」

「心身機能・身体構造」の要素は、生命レベルと表されます。

心身機能は、手足の動きや精神の働き、視覚・聴覚、内臓の働きを指し、身体構造とは、手足の一部、心臓の一部(弁など)を指します。

具体的には、耳が聞こえづらかったり、認知機能の低下がみられたりすることなどが挙げられるでしょう。

③:ICFにおける「活動」

「活動」は生活上で必要な動作のことで生活レベルと表現されます。

歩行や入浴、更衣はもちろん、調理や掃除などの家事行為、仕事で必要な行為、趣味やスポーツで必要な動作なども含まれます。

また、「活動」では「できる能力がある」行為と「実際にしている」行為とで分けて考えます。具体的には、「自分で掃除はできるけど実際には家族がしている」などが当てはまります。

④:ICFにおける「参加」

「参加」は社会レベルや人生レベルと表現され、親としての家庭内役割とか職場での役割とか、趣味の会に参加する、文化的・政治的・宗教的な行事に参加するなどが含まれます。

具体的には家族の一員として結婚式に参加するとか、趣味のグループのリーダーとして参加するなどが挙げられます。

⑤:ICFにおける「環境因子」

「環境因子」はその人の周りの建物や道路といった物的な環境だけでなく、家族・友人・仕事の仲間などの人的な環境や、医療・福祉・介護といったサービスや制度などの制度的な環境があります。

⑥:ICFにおける「個人因子」

「個人因子」とはその人の年齢や性別、民族、職歴や学歴、ライフスタイルといった個性に近い要素です。

個性を尊重していく現代において重要視されている要素と言えます。

ICFの分類コードと評価点の見方

ICF(国際生活機能分類)は、人々の健康状態とその生活機能に関する広範な情報を体系的にアルファベットと数字で分類し表現する国際的な分類方式です。

ここでは、ICFの構成要素、分類コード、そして評価点の見方についてコード例を参考に、簡潔に解説します。

ICFコードの基本構造

ICFコードの基本構造

ICFのコードは、「分類コード」分離点(ピリオド)をはさみ「評価点」で表します。

要素説明
アルファベットコードの最初の部分で、対象となる身体機能、身体構造、活動と参加、環境因子を指す。
b = 心身機能
s = 身体構造
d = 活動と参加
e = 環境因子
分類コード分離点より前のアルファベットと数字を含むコード。
第一レベル(大分類)、第二レベル(中分類)、第三レベル(小分類に分けて、対象となる身体機能・身体構造・活動と参加・環境因子を表す。

心身機能: b110~899
身体構造: s100~899
活動・参加: d110~999
環境因子: e110~599

例:「d450」 では、「d」 は活動と参加を意味し、「450」 は具体的な活動項目(例: 歩行)を表す。
評価点コードの後半部分で、分離点(ピリオド)より後ろに位置する。
評価点は、対象となる機能や活動の状態を示すために用いる。

ここからは、さらに評価点について少し詳しく説明していきます。

評価点の見方

ICFの評価点は、個人の健康状態やその影響を受ける機能、活動、参加の程度を定量的に評価するために用いられる数値です。

これらの評価点は、個人が特定の機能や活動をどの程度実行できるか、またはどの程度問題があるかを示します。

評価点は、ICFコードに付随する数値であり、通常は小数点以下の数値(例: .0, .1, .2, .3, .4)で表されます。

以下に、評価点の各部分について詳しく説明します。

第一評価点(実行状況)

個人が現在の環境でどの程度機能または活動を実行できるかを示す評価点です。

この評価は、個人が実際の日常生活で直面する制限を反映しています。評価は、無支援での実際のパフォーマンスを基にしています。

第二評価点(支援なしでの能力)

理想的または標準的な環境において、個人がどの程度の活動を行うことができるかを評価するものです。

この評価は、外部の支援や特別な調整がない場合の個人の最大限の能力を示しています。

第三評価点(支援ありでの能力)

適切な支援(技術的な補助具、介助者など)が提供された場合、個人がどの程度の活動を行うことができるかを示します。

これは、外部のサポートを受けた状態での潜在的な能力を評価するものです。

第四評価点(支援なしでの実行状況)

個人が支援なしで実際にどの程度活動を実行しているかを評価するものです。

これは通常、第一評価点と似ていますが、環境やサポートの可用性による影響を除外して個人の自立性を評価します。

各評価点は0から4のスケールで評価されることが一般的で、次のように解釈されます。詳細不明の場合は8、非該当の場合は9を記載する決まりです。

評価点評価内容説明
0問題なし
(No problem)
問題、困難、制約、変更が全くない、または無視できるレベル
1軽度の問題
(Mild problem)
問題があるが、全体の機能には大きな影響を与えない。
通常の活動を若干制限
2中等度の問題
(Moderate problem)
明らかな困難があり、通常の活動がかなり制限される
3重度の問題
(Severe problem)
大きな困難があり、通常の活動が極めて制限される
4完全な問題
(Complete problem)
完全に問題があるか、特定の領域で全く機能しない
8詳細不明
(Not specified)
情報が不足しているか、評価が不明で判断できない
9評価項目が該当しない
(Not applicable)
特定の状況や背景では評価項目が適用されない

この評価点を通じて、個々の患者の状況をより詳細に理解し、適切な治療や支援プログラムを計画することができます。

ICFの書き方:具体例

ICFの書き方例を、高齢者に焦点をあてて見てみましょう。

これらのコードを使用することで、高齢者の現在の状況を正確に把握し、適切な支援や介入計画を立てることができます。

『 b7600.2232』:「関節の機能」に関する心身機能の分類コードの場合

コード説明
b7600「関節の機能」を表す心身機能の分類項目。
.2232評価点、それぞれが特定の状況を表します。

評価点をさらに詳しく見ていきましょう。

評価点の詳細説明例: b7600.2232
第1評価点実行状況の評価点2 = 関節の動きに中等度の問題がある
第2評価点支援なしでの能力の評価点2 = 支援なしでは一部の動きが制限される
第3評価点支援ありでの能力の評価点3 = 適切な支援があれば、ほぼ正常に動けるが、完全ではない
第4評価点支援なしでの実行状況の評価点2 = 支援なしでは多くの動きに問題がある

この分類コード「b7600.2232」は、「関節の機能」における特定の状況を詳細に示しています。

関節の動きに中等度の問題が存在し、特定の支援を受けることで改善されるが、完全な正常性は達成されない状態を指します。

『d6400.1422』:「家事」に関する活動と参加の分類コード

コード説明
d6400「家事」を表す活動と参加の分類項目。
.1422評価点、それぞれが特定の状況を表します。

評価点をさらに詳しく見ていきましょう。

評価点の位置説明例: d6400.1422
第1評価点実行状況の評価点1 = 家事活動に軽度の問題がある
第2評価点支援なしでの能力の評価点4 = 支援なしでは家事をほとんど行えない
第3評価点支援ありでの能力の評価点2 = 適切な支援があればいくつかの家事は可能
第4評価点支援なしでの実行状況の評価点2 = 支援なしでは家事の多くに問題がある

この分類コード「d6400.1422」は、「家事」における特定の状況を詳細に示しており、軽度の問題からほとんど行えない状態に至るまでの家事活動の能力と実行状況を表しています。

適切な支援があればいくつかの家事は可能となるものの、支援なしでは多くの家事に問題が生じる状態を指します。

高齢者の生活におけるICFの評価方法と具体的な活用例

高齢者の生活において、ICFは個人のニーズを把握し、適切な介護サービスや支援を計画するために活用されます。

例えば、住宅のリノベーションの必要性の評価や、日常生活への参加を支援するためのリハビリテーション計画の策定に用いることが可能です。

具体的な評価方法と活用例

実際に、具体的なICFの評価方法と活用例を紹介します。

【対象者】82歳男性、軽度の認知症と診断。

【心身機能】

コード 分類評価点 活用例
b144記憶の機 能.1 or .2記憶力の支援にメモ帳やスマートフォンのリマインダー機能を活用。日常生活の中で忘れないようにする戦略を提案。
b164高次の認知機能.2判断力や計画能力を支えるために、日々のスケジュールを簡単にして、家族やケアスタッフとの定期的な会話を促進。

【活動】

コード 分類評価点 活用例
d230食事の準備を行う.2 or .3食事の準備が困難な場合は、簡単な調理方法やデリバリーサービスを提案。必要に応じて家族や介護者の支援を促進。
d520個人的な衛生の管理.1 or .2衛生管理のためのサポートとして、手すりや滑り止めマットの設置、介護サービスの活用を検討。

【参加】

コード 分類評価点 活用例
コード分類評価点活用例
d920娯楽と余暇.1 or .2地域の集まりへの参加が減少している場合、ゲートボールなど趣味を活かした活動やデイサービスプログラムへの参加を奨励。
コード 分類評価点 活用例
d230食事の準備を行う.2 or .3食事の準備が困難な場合は、簡単な調理方法やデリバリーサービスを提案。必要に応じて家族や介護者の支援を促進。
d520個人的な衛生の管理.1 or .2衛生管理のためのサポートとして、手すりや滑り止めマットの設置、介護サービスの活用を検討。

【環境因子】

コード 分類評価点 活用例
e580健康サービスシステムおよび政策+2デイサービスや地域の支援グループの活用を通じて、社会的サポートと健康管理を強化。
e115製品と技術の利用+1安全な生活環境を実現するために、必要な改善や技術の導入を行い、住宅の安全性を高める。

【個人因子】

個人因子に関しては、ICFコードでは直接評価されません。

しかし、ケアプランを作成する際に考慮すべき重要な要素です。過去の職業経験や趣味、価値観は、介護計画や治療方法の選択に影響を与えます。

例えば、ガーデニングや木工など、手を動かす活動を好んでいた人には、それに類似した活動やデイサービスプログラムへの参加を推奨します

これらのICFコードと評価点は、82歳男性の現在の状態を理解し、その人に合ったサポートや介入を計画するために利用できます。

こうしてアプローチすることで、ニーズに適した支援を受けながら自分の能力に応じて、できる限り自立した生活ができるようになるでしょう。

パーソナルモビリティとICFの関係性

パーソナルモビリティとICFの関係性

シニアカーや電動車いすなどのパーソナルモビリティを導入すれば、高齢者の活動範囲が広がり、ICFの「身体機能」「活動」「参加」を支援し、「環境因子」の改善を通じて利用者の自立と社会参加の促進が可能です。

とはいえ、高齢者の方やご本人が、電動車いすの運転に不安な場合もあるかと思います。

そんなときにぜひ利用していただきたいのがモニスタ。電動車いすに取り付けて見守りができるGPSサービスです。「モニスタ」のGPS見守りサービスがあれば、現在地だけでなく、外出状況やお出かけの変化・安全運転状況などが把握できます。

電動車いすのタイヤやバッテリーなどの消耗部品の交換の目安も教えてくれるので、突然の故障なども防げるため、安心安全に利用できるようになるでしょう。

利用できる車種や料金については、モニスタ公式サイトまでお問い合わせください。

まとめ:ICFは医療や介護の現場で幅広く役立つ分類法

ICFは、健康問題を持つ人々だけでなく、全ての人々に関する分類です。

「障害」を個人の問題としてではなく、個人とその環境との間の相互作用として捉えることにより、より公平で包括的に理解し、適切な支援を行うための重要な分類方法といえます。

これにより、健康政策の策定、リハビリテーションや教育プログラムの計画、社会的支援の提供など、さまざまな状況や背景での人々のニーズに応じた支援が可能です。

特に高齢者のICFの評価を向上させるために、電動車いすは有力な手段です。「モニスタ」のGPS見守りサービスとあわせて導入を検討してみてくださいね。

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